
共有アプリBeRealで銀行の顧客情報流出―事例から見るSNSによる企業リスクと対策
アクモスセキュリティチームです!
「SNS投稿で情報漏えい」と聞くと、社員が意図的に機密情報を投稿したケースを想像する方も多いかもしれません。
しかし、2026年4月に明らかになった銀行での情報漏えい事例は、少し違いました。
問題となったのは、銀行の営業店の執務室内を撮影した動画や画像がSNS上で拡散され、顧客情報が外部から閲覧できる状態になっていたこと。投稿に使われたとみられるのは、SNSアプリ「BeReal」です。
今回の事例で企業が考えるべきなのは、「BeRealを使っていたかどうか」だけではありません。
写真・動画・音声を、ほとんど考える間もなく共有する文化が広がる中で、企業の機密情報がどのように漏れるのか。そのリスクを、改めて見直す必要があります。
この記事では、銀行の事案を事実ベースで整理しながら、BeRealの機能によって広がる情報漏えいリスク、そして企業が取るべき対策について解説します。
目次[非表示]
- 1.銀行で何が起きたのか
- 2.流出した情報と企業の対応
- 3.BeRealの仕組みと「映り込み」による情報漏えい
- 4.BeRealの機能で広がる新たな漏えいリスク
- 4.1.BTS機能:写真のつもりが、音声まで残る
- 4.2.Bonus BeReal:投稿機会が増えるほど、リスクも増える
- 4.3.BeReal Audio:音楽共有も、企業には別のリスクになる
- 4.4.タグ付け・再シェア:投稿者以外から広がるリスク
- 5.「即撮り・即共有」文化は他SNSにも広がる
- 6.企業にとっての本当のリスクと課題
- 7.企業が今すぐ見直すべき対策
- 7.1.1.私用端末の持ち込みルールを明確にする
- 7.2.2.撮影禁止エリアを明示する
- 7.3.3.「映り込み」と「録り込み」を教育する
- 7.4.4.SNSガイドラインを最新化する
- 7.5.5.「知っている」から「行動できる」へ変える
- 8.まとめ:SNS対策は「禁止」だけでは足りない
銀行で何が起きたのか
2026年4月30日、九州地方を中心に展開する銀行において、同行職員がインターネット上に投稿した営業店執務室内の動画や画像が拡散された事案について、お詫びとお知らせが公表されました。
報道によると、問題となったのは支店内で撮影された動画や画像です。女性行員が執務室内を撮影し、SNSアプリ「BeReal」に投稿していたとされています。
また一部報道では、問題となった投稿は2025年1月から10月頃にかけて行われていたとされており、2026年4月29日夜、SNS上で拡散されていることに銀行側が気づき、問題が表面化。
銀行側は4月30日の公表時点で、動画や画像に顧客7名の氏名が記載されたホワイトボードが映っていたことを明らかにしました。
その後の追加調査により、影響範囲はさらに広がっていたことが確認されています。
流出した情報と企業の対応
追加調査の結果、外部から閲覧可能な状態になっていた情報は、個人顧客8名に関する情報および法人顧客19社の名称だったと報じられています。
また、そのうち個人1名については、氏名だけでなく住所も確認できる状態に。
映像には、顧客情報だけでなく、業務上の情報も映り込んでいたと報じられています。たとえば、文字が書かれたホワイトボード、デスク上の書類、パソコン画面、業務目標、新規開拓件数、融資金額とみられる数字などです。
金融機関にとって、顧客情報の管理は信頼の基盤。氏名だけであっても、顧客情報が外部から閲覧できる状態になったという事実は、非常に重いものです。
同行は、2026年5月12日の決算記者会見で頭取が改めて謝罪しました。また、出場予定だったイベントへの参加を自粛。さらに報道によると、営業店執務室などへの私用スマートフォンの持ち込みを、従来の「原則禁止」から「全面禁止」へ強化したとされています。

BeRealの仕組みと「映り込み」による情報漏えい
BeRealは、1日1回、不定期のタイミングで通知が届き、その場の様子を撮影・投稿するSNS。通知を受けた後、BeRealアプリを使って、短時間でフロントカメラとバックカメラで周囲を撮影・共有する仕組みです。
つまり、自分の顔だけでなく、自分の周囲の風景も同時に写りやすいアプリです。
職場でこの仕組みを使うと、本人が意識していなくても、背後のホワイトボード、机の上の書類、PC画面、掲示物、社員証などが画像に入り込む可能性があり、ここが今回の事例の大きなポイントです。
本人に「顧客情報を持ち出そう」という意図がなかったとしても、カメラを向けた瞬間、そこにある情報が外部に出てしまうことがあります。
これまで企業が想定してきた情報漏えいは、メールの誤送信、添付ファイルの送信ミス、USBメモリの紛失、不正アクセス、従業員の承認欲求による投稿などが中心でした。
しかし、今回のようなケースでは、情報を「持ち出している」という意図・自覚がないまま、職場の一部が外部に公開されてしまいます。
これは、SNS時代における新しい情報漏えいの形です。
BeRealの機能で広がる新たな漏えいリスク
企業がさらに注意すべきなのは、BeRealが単なる「1日1回の動画像共有アプリ」にとどまらない点です。
BeRealには、写真だけでなく、撮影前後の状況や、そのときの音声・共有範囲に関わる機能もあります。これにより、企業が想定すべき漏えいリスクは、動画像の映り込みだけでなく、音声・投稿回数・再共有へと広がっています。
BTS機能:写真のつもりが、音声まで残る
BeRealには「BTS(Behind The Scenes)」という機能があります。
公式ヘルプによると、BTSはBeRealを撮影する直前の数秒間を記録し、投稿とともに共有できる機能。初回利用時にはマイクへのアクセス許可を求められ、音声を含めた記録が可能になります。
企業にとって重要なのは、社員が「写真を撮っているだけ」と思っていても、周囲の音声まで含まれる可能性があることです。
そうすると、次のような情報が漏れるリスクがあります。
- 職場内の会話
- 顧客名や案件名を含む電話対応
- オンライン会議の音声
- 上司や同僚との業務連絡
- 来客対応中のやり取り
静止画の映り込みだけでなく、環境音や会話まで情報漏えいの対象になる。ここは、企業が見落としやすいポイントです。
Bonus BeReal:投稿機会が増えるほど、リスクも増える
「Bonus BeReal」という機能もあります。
時間内に投稿すると、その日に追加でBeRealを投稿できる仕組みであり、ユーザーがカメラを起動する機会が従来より増える可能性があります。
企業目線で見ると、これは単純に「撮影される回数が増える」ということです。
1回だけなら企業情報が映らないかもしれません。しかし、1日のうちに複数回、職場や移動中、会議前後などで撮影が行われれば、機密情報が映り込む確率は上がります。
禁止ルールが曖昧なままでは、社員本人も「このくらいなら大丈夫」と感じてしまうかもしれません。
BeReal Audio:音楽共有も、企業には別のリスクになる
BeReal Audioでは、Apple MusicやSpotifyなどと連携し、BeRealを撮影した瞬間に聴いている音楽を共有できる機能で、一見すると、企業の情報漏えいとは関係がなさそうに見えます。
しかし、企業側が考えるべきなのは、SNSが単なる写真投稿ではなく、「今いる場所」「今していること」「今聞いているもの」まで含めて共有する方向に進んでいるという点。社員の行動や場所、勤務中の状況が、複数の情報から推測される可能性があります。
直接の機密情報でなくても、投稿時間、位置情報、背景、音声、コメント、タグ付けが組み合わさることで、企業活動の一部が見えてしまうことがあります。
タグ付け・再シェア:投稿者以外から広がるリスク
友人をタグ付けしたり、タグ付けされた投稿を再シェアしたりする機能も用意されています。
これは、旅行やイベントなどを複数人で共有するには便利な機能。
しかし企業にとっては、「自社の社員が投稿しなくても、同席していた別の人の投稿から情報が広がる」リスクを意味します。
たとえば、取引先との打ち合わせ、展示会、社内イベント、懇親会などで、他者の投稿に自社の資料や社員、会話、場所が映り込む可能性があります。
情報管理は、自社の社員だけを見ていればよい時代ではなくなっているのです。

「即撮り・即共有」文化は他SNSにも広がる
今回の話を、BeRealアプリだけの問題として片付けられません。
2026年5月、MetaはInstagramに「Instants」という新機能を発表。Metaの公式発表では、Instantsはその瞬間を撮影し、友人とすばやく共有するための機能として紹介されています。
このように、SNSは「きれいに編集して投稿する」だけでなく、「その場の写真をすばやく共有する」方向にも広がっており、BeRealを禁止すれば終わり、ではありません。
Instagram、メッセージアプリ、AIツール、ウェアラブル端末など、即時共有・即時記録を促すサービスは増えていく可能性があります。
企業が向き合うべきなのは、特定のアプリ名ではなく、若年層を中心に定着しつつある「撮影したものをすばやく共有する」という新しいデジタル行動そのものです。
企業にとっての本当のリスクと課題
今回の事例を、個人の不注意だけで終わらせるのは危険です。
もちろん、機密情報を扱う職場で私用スマートフォンを使い、執務室内を撮影することは重大な問題ですが、企業として考えるべきなのは、「自社の職場でも同じことが起きないと言い切れるか」という点です。
報道によると、銀行では私用スマートフォンの持ち込みは従来から「原則禁止」とされていたと報じられていましたが、それでも撮影・投稿は行われました。
ここから見えるのは、ルールを作るだけでは不十分だということ。現場で守られるルールになっているか、社員がなぜ危険なのかを理解しているか、違反や不安があったときに相談できる体制があるかまで見直す必要があります。
SNS投稿による情報漏えいは、顧客や取引先からの信頼低下に直結します。たとえ流出した情報が氏名だけであっても、「この会社に情報を預けて大丈夫なのか」という不安につながります。
また、SNSで拡散された情報は、企業名とともに長く残る可能性が高く、投稿を削除しても、第三者が画面録画やスクリーンショットを保存していれば、完全な回収は困難です。
本人に悪意がなかったとしても、企業としての責任は問われます。だからこそ、社員が無意識に情報を漏らさないためのルール、教育、仕組みづくりが必要です。
企業が今すぐ見直すべき対策
では、企業はどのような対策を取るべきでしょうか。
ポイントは、「禁止」だけでなく、「理解」「習慣」「訓練」まで落とし込むことです。
1.私用端末の持ち込みルールを明確にする
機密情報を扱うエリアへの私用スマートフォンの持ち込みルールを見直しましょう。
「原則禁止」なのか、「全面禁止」なのか、「ロッカー保管」なのか、「業務上必要な場合のみ許可」なのかを明確にする必要があります。
また、ルールを作った後は、現場で実際に守られているかを確認する仕組みも必要です。
2.撮影禁止エリアを明示する
執務室、窓口、バックヤード、工場、開発室、会議室など、撮影してはいけない場所を明確にしましょう。
「社内は撮影禁止」と大きく言うだけでは、社員が判断に迷うことがあるため、たとえば、次のように具体化することが大切です。
- 顧客情報がある場所では撮影しない
- PC画面やホワイトボードがある場所では撮影しない
- 書類や帳票が机に出ている場所では撮影しない
- 会議中・電話中・来客中は録音や撮影をしない
- 社内写真をSNSに投稿しない
3.「映り込み」と「録り込み」を教育する
これからの情報漏えい対策では、映像に写る「映り込み」だけでなく、音声が入る「録り込み」も教育する必要があります。
写真、動画、音声、画面共有、AI議事録、ウェアラブル端末など、情報が外に出る経路は増えています。
社員に伝えるべきなのは、「情報漏えいはファイル送信だけではない」ということ。背景に写ったホワイトボード、数秒入った会話、画面端に見えた顧客名も、立派な情報漏えいになり得ます。
4.SNSガイドラインを最新化する
SNSガイドラインが数年前のままになっていないでしょうか。以前のSNS対策は、炎上防止や誹謗中傷対策が中心だったかもしれません。
しかし今は、日常投稿から機密情報が漏れるリスクを想定する必要があります。
以下のような項目を盛り込みましょう。
- 業務中・職場内での私用SNS投稿の禁止
- 社内施設や執務室の撮影ルール
- 顧客情報・取引先情報の映り込み禁止
- 音声・動画投稿時の注意
- 位置情報付き投稿の注意
- タグ付け・再シェアに関する注意
- 生成AIやAI議事録ツールの利用ルール
- 違反や不安があった場合の報告フロー
5.「知っている」から「行動できる」へ変える
セキュリティ教育でよくある課題は、社員が「知識としては知っている」が、実際の場面で行動できないこと。今回のような情報漏えいは、反射的な行動や日常の習慣から起こります。
だからこそ、実際のシーンを想定した訓練が必要であり、当社サービスである標的型攻撃メール訓練も同じです。
フィッシングメールでは、攻撃者が「至急」「重要」「アカウント停止」などの言葉で受信者を焦らせます。BeRealやInstantsのような即時共有型のSNSでは、アプリの仕組みそのものが「今すぐ撮る」「すぐ共有する」という行動を促します。
どちらにも共通するのは、一呼吸おいて確認・報告する力が必要だということです。
- メールの送信元を確認する
- リンク先を確認する
- 添付ファイルを不用意に開かない
- 撮影前に背景を確認する
- 音声が入っていないか確認する
- 迷ったら上司や情報システム部門に相談する
こうした行動は、注意喚起だけでは定着しません。実際に体験し、失敗しやすいポイントを知り、自分ごととして身につけることが重要です。
まとめ:SNS対策は「禁止」だけでは足りない
銀行のBeReal投稿をめぐる問題は、企業に大きな教訓を残しました。
企業・公的機関における情報漏えいは、悪意ある攻撃者や内部不正だけで起きるものではありません。社員が何気なく撮った写真、数秒だけ入った音声、友人だけに見せるつもりだった投稿、便利だから使ったアプリから、企業の信用を揺るがす事態に発展することがあります。
そして今、SNSは写真だけでなく、音声、位置情報、タグ付け、再シェアへと進化しています。
企業に求められているのは、特定のアプリを禁止するだけではなく、社員のデジタル行動そのものに向き合うことであり、「うちの社員は大丈夫」ではなく、「誰にでも起こり得る」と考えて備えること。
そのうえで、ルールの整備、端末管理、SNSガイドライン、そして実践的な教育・訓練を組み合わせることが大切と言えます。
――
アクモスでは、企業のセキュリティ意識向上を支援するため、標的型攻撃メール訓練サービスをご提供しています。
「怪しいメールに気をつけましょう」だけでは、もう十分とはいえません。
実際の攻撃に近い訓練メールを通じて、社員がどこで迷い、どこでクリックしやすいのかを可視化し、組織全体のセキュリティ意識を高めることができます。
「社員のセキュリティ意識を底上げしたい」
「メール訓練を始めたいが、何から進めればよいかわからない」
「SNSや生成AI時代に合わせて、情報漏えい対策を見直したい」
そのようにお考えの企業様は、ぜひアクモスの標的型攻撃メール訓練サービスをご検討ください。
フィッシング・攻撃・偽物・不審メールへの対策をご検討される場合は、アクモス標的型攻撃メール訓練の「サービスの全容がわかる資料ダウンロード」または「無料でメール訓練サービスを試せるフリープラン」をどうぞ!
<アクモスのセキュリティサービス紹介>
標的型攻撃メール訓練サービスの概要
<アクモスのセキュリティサービス紹介>
TMT3ヶ月プラン・料金の詳細
<資料で検討したい場合>
サービス資料のダウンロード
<問い合わせしたい場合>
お問い合わせ・導入相談
<2ヶ月間無料で体験できる無料プランで試してみたい場合>
Freeプランのお申込みはこちら




